2004年10月20日

「社会起業家」の支援を考えるA

服部篤子  CAC-社会起業家研究ネットワーク、
兼任講師(跡見学園女子大学・お茶の水女子大学・明治学院大学)


アイデアを実現するために「社会起業家ゼミナール」の開催

地域には今、治安、教育、子どもや高齢者のケアなど緊要な問題が山積している。社会起業家は、地域の課題に積極的に関わってきた。地域社会の再構築を目指し、住民、行政、企業を巻き込んだ新たなネットワークを構築して解決しようとしている。
地域の課題を発見した人々、解決策にアイデアを持っている人々は、そのアイデアを実現させるためには、どうすればいいのだろうか。そのような個人を支援するために、CAC−社会起業家研究ネットワークは、「社会起業家ゼミナール」を開催した。これは、社会起業家精神を持った人々の育成を目指す、研修プログラムである。
  第1回目は、今夏、4日間にわたって「社会起業家サマースクール」と題し、株式会社SFDC社と三菱地所株式会社に会場の提供を受け、都内恵比寿と大手町で開催した。対象は、広く社会起業家に関心のある人から、地域の問題に対するアイデアを具現化したいと考えている人など、これから一歩を踏み出す人を想定した。ゼミナールの構成は、初回のキックオフ講演会と、ワークショップからなる。ワークショップでは、毎回参加者が発表し、メンターと意見交換をする。そして最終回には、営利と非営利の世界で活動経験のあるゲストメンターが講評をした。
  参加者は、各自の問題意識に沿って、リサーチコース、あるいは、実践コースのどちらかを選択する。社会起業家に関心のある人は、前者を選び、例えば、社会起業家によるネットワークの構築の仕方、あるいは、フェアートレードと社会起業家、といった特定のテーマに沿ってインタビューを実施し、レポートを作成する。実際に、事業アイデアのある人は、社会起業家や第一人者にインタビューを実施して、コンセプトワークのヒントを得る。全員でサイトビジットするのではなく、個別の目的に沿って、適切なインタビュー先を推薦し、ヒヤリングを実施することを推奨した。ゼミナールには毎回5名程度のメンターが同席する。メンターは、各自のテーマに沿って発表する参加者の頭の交通整理を手伝う役割を担った。
  参加動機や、目標は様々である。徹底してオーダーメイドの研修となるよう注力した。その一方で、参加者は、発表の場で相互に刺激を受けることができたと思う。参加者同士が連携してやってみたい、という声が最終回で聞かれたのは、その成果であったかと思う。

  7月、認定NPO法人JAHDS人道目的の地雷除去支援の会(以後ジャッズ)の冨田洋さんのキックオフ講演会から始まった。ジャッズは、企業連合NGOと称している通り、多くの企業とのパートナーシップをもって活動を展開している点に特徴がある。寄付という金銭的な支援だけではなく、各社が出向として運営に携わる人材を提供している点は注目に値する。一般に、社会の問題を事業を通じて解決する社会起業家が多いが、冨田さんの場合は、解決手法として事業を展開しているわけではない。しかし、伝統的な慈善活動をビジネスのスキルを用いてダイナミックに行なうなど、社会起業家精神の高い人物として知られている。支援先の選定にも基準を設け、地雷除去だけを活動目的とせず、それを通じて地域の再興につながるようプロジェクトを設計する。私は、冨田さんの講演を聞き、数々の失敗から常に学ぶ姿勢に、成功の鍵があるのだと思った。

  その後、8月と9月に、ワークショップを行なった。本ゼミナールの参加者は、多彩な目的を持った人々であった。社会に出る前に疑問を感じ自分を見直す契機に参加した若者、女性の立場で女性を支援したいと考えた行政の職員、リタイア後は起業をしたいと考えた国家公務員、ITが米国より普及しないのはなぜかITを用いて社会起業家支援ができないかといった問題意識をもった個人事業主、と幅広いものであった。中には、既にNPO法人を立ち上げ、新たな壁にぶつかったため、その問題解決を意図した参加者がいた。ここでその玉田さんの活動を紹介したい。

  玉田さんは、「NPOバイリンガルろう教育センター龍の子学園」(以後龍の子学園)の理事をしている。日本のろう学校では、文部科学省の指導のもと、およそ70年前から手話を使うことを禁じている。手話は言語ではない、話せることが社会参加につながる、という考え方だそうだ。しかしながら、ろう者にとって、手話は自然な第一言語であり、第二に、書記言語(読み書き)を使う。この順で学ぶバイリンガル教育は、20年前から欧米で一般化しているそうだ。そして最後に音声日本語を習得する。
龍の子学園は、青年ろう者教員が中心になって立ち上げられた。この手話と書記言語のバイリンガル教育を実施している。出来ないことを補う教育ではなく、ろう児の得意な部分を伸ばそう、という教育である。一般のろう学校では、幼稚園からしゃべる訓練を受けるという。上手に話せると拍手され、その後、地域の学校に行くことを目指す。しかし、うまく溶け込めない子どもも少なくない。
龍の子学園は、現在、豊島区の廃校を借用して校舎としている。来春から使えなくなり、新たな校舎を探している。そして、継続的な運営を目指して様々な事業プランを考えていた。ゲストメンターの増田さんは、障害児支援に20年以上の経験がある。最終回、玉田さんへのアドバイスはこうだった。障害者には様々あり、その親たちは、親の会を立ち上げ、長年苦労してきた。しかし、其々の親の会は、行政に立ち向かって訴え続けるなど、いずれも同じ問題を抱え、時間を労費してきた。まずは、他の親の会に学ぶべきではないだろうか。そして、新たなろう児のフリースクールを軌道に乗せて、成果を示すべきであろう。そこに、新たな価値観が創造されることとなろう。
サステイナブルな運営を図るために、収益事業を推進する風潮がある。しかし、事業を考える際に、本来の非営利活動のミッション(使命)を見失うことのないよう注力するべきことを改めて考えさせられた。サマースクールは、我々メンターこそ、大いに学び、自らの活動を見直す契機となった。今後、より一層社会起業家の支援につながるプログラムの開発に努めたいと痛感した。
posted by CAC at 01:43| Comment(2) | TrackBack(1) | 財団・支援と社会起業家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
スコップを美術館の壁に置くとアートの視点になりますが、それで、荒地を掘り、種を蒔き、社会に向けた美しい花を咲かせる、そんな、役割のスコップ的な仕事を折り紙でやっています。これまで、国連やユネスコでも拍手喝采されました。そこで、小学校に、心より、手が先だ、自信や希望はそこから、と自費出版の本を贈りたいのです。支援して下さる企業や団体を訪ねてみたいのですが、よい情報をお願いします。ブロックおりがみ友の会
Posted by 佐藤芳夫 at 2005年12月18日 14:38
くたばれマーケィテング。わたしのビジネス、誰でもおりがみはするでしょう。でも、いくら良いものが出来たからといって、それを国連とかユネスコへ電話を入れて、飛行機のチケットを手に飛んで行ってやってみせるなんてことはしないよね。だけど、それをスラスラやってる自分が怖い。しかも、本を出し、ポスターをB全版で印刷して支援企業に購入してもらっています。このビジネスに競争者出てきてほしいです。
Posted by 佐藤芳夫 at 2006年04月15日 10:22
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