2005年09月06日

市井のソーシャルイノベーターたち D

自治体のNPO助成を考える

吉田信雄

神奈川県葉山町では「葉山まちづくり助成」という名でNPOへの助成を行っている。ボクはCACでの活動が評価され、助成金の審査員を務めさせていただいている。この助成制度が5年目を迎えたということで先日、事務を町から受託している「葉山まちづくり協会」のスタッフと今後のあり方について意見交換を行った。その議論が刺激的だったので、今回はこれを題材に「自治体のNPO助成を考える」というテーマで書くこととする。






葉山町は“なぜ”NPO活動に公的資金をつぎ込むのか


ボクは、目的があいまいだと問題提起をした。

○政策のターゲットがはっきりしていない
-「NPO活動をする住民」なのか「NPO活動の受益者としての住民」なのか-

○ターゲットが「NPO活動をする住民」の場合
-なぜ、ボランタリー活動や民間非営利事業に公的資金を投入するのか-

○ターゲットが「NPO活動の受益者としての住民」の場合
-なぜ役所がやらないのか、なぜ民間にやらせるのか-

役所とNPOとの協働の目的を考える必要があると。


自治体はなぜNPOの支援を行っているのだろうか


例えば、

「地方自治体のNPO支援策等に関する実態調査」
(千葉県、平成15年3月)を見ると、

25の都道府県、158の市区町村がNPOに対する補助金事業を実施している。

NPO支援によって期待される効果として、

自治体が最も支持した回答は

「市民の多様なニーズに対応したサービスが増える」で、
都道府県で93.5%、市区町村で65.1%。

続いて、

「協働できるNPOが増え、自治体のサービスの質が向上する」が、
都道府県で67.4%、市区町村で59.2%となっている。

これを見ると、住民に対するサービスが増える、

サービスの質が向上するということが、

自治体がNPOを支援する目的にあるようだ。


NPOを支援することが目的となってしまうのは問題


葉山での議論では

NPOを支援する目的を巡って、次のような意見が出た。

「NPOを立ち上げたいという人をサポートすることで、まちを元気にする」

しかし、一方で、

「NPOは自立することが一番大切であって、
 まずは他者に頼らず、自分たちの力でやるべきではないか」

「立ち上げは民間の資金で応援すべきで、
 具体的な公的活動の実施について助成を行うべきではないか」

「助成する場合は、NPO支援という政策の枠組みではなく、
 個々の縦割りの枠組みで行うべきだ」

という意見もある。

いずれにしても、当たり前だが、目的があって手段があるのであって、

NPOを支援することが目的となってしまうのは問題である。


なぜ役所がやらないのか、なぜ民間にやらせるのか


ボクは、自治体がNPOを支援する場合、

NPOのサービス受益者を政策のターゲットとすべきであると考えている。

このため、NPOは自立するまで公的助成を受けるべきではない、

NPOへの助成は縦割りの枠組みで行うべきという意見を述べた。

サービス受益者を政策のターゲットとした場合、

だったら「なぜ役所がやらないのか、なぜ民間にやらせるのか」

という問題にぶつかる。

先の実態調査の結果によれば、

自治体は「住民に対するサービスが増える、サービスの質が向上する」から

NPOを支援するという。

「サービスが増える」とは、

自治体が行っていない(もしくは行っているが不足している)事業を

NPOが行うことを指し、

「サービスの質が向上する」とは、

自治体が行う事業をNPOが代行することを指しているといっていいだろう。

しかし、「サービスが増える」という目的であるならば、

NPOに少額の助成を出して目的を達成させるのでなく、

NPOに業務委託を行うべきである。

さらに、これはNPO支援の枠組みでなく、

縦割りの業務の中で行うべき事業であると考える。

「サービスの質が向上する」という目的であるならば、

まずどのようなNPOによるサービスが増えると良いと考えているのか、

自治体に都合の良いNPOが増えるとの批判はあるとしても、

どのような成果を求めているのかは先に提示すべきだろう。

さらに、やはりこうした業務も、

NPO支援の枠組みでなく、縦割りの業務の中で行うべきであると考える。


NPOは市民参加を促進するからか?


こうした議論とは別に、

「NPOへの支援は市民参加を促進する」という議論がある。

NPOの活動にボランティアで参加する住民、会員として参加する住民、

が増えることは、住民のまちづくり活動への参加が増えること

を意味するという考え方だ。

例えば、平成17年7月30日付け読売新聞の

「再編日本地図 街づくりNPO設立ラッシュ」という記事によれば、

市町村合併を機に、街づくりに取組むNPOが、

旧自治体単位で設立されているという。

こうしたNPOは、旧自治体の住民が会員となり、

旧自治体が行っていたイベント業務や公共施設の管理業務など

を合併後の自治体からを請負っている。

こうしたNPOに対し一定の賛同をするが、

住民がボランティアとして参加すること、

また、会員として参加することことを前提として、

自治体が特定のNPOの存在自体に対して一定の評価を与えてしまって良いのか

という疑問に対して、どのように説明できるのか不安が残る。
posted by CAC at 05:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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