2007年05月07日

【巻頭言】ソーシャル・イノベーションに欠かせない複眼的思考

 海外に暮らしていると、テレビやラジオから「日本」という言葉が聞こえるごとに耳を“ダンボ”にしてしまう(めったに日本の話が流れることもないのだけど)。日本のニュースや話題の多くは新しいハイテク商品紹介(なぜか必ず女性社員かキャンペーンガールが一緒に映っている)が占めるのだが、社会的な話題となると結構真実を突いているものが往々にしてある。

 今年は英国で奴隷制度が廃止されて200周年を迎えたが、先日ある英紙で「現代の奴隷制」という特集が組まれ、世界各地の問題が地図でビジュアルに紹介されていた。その中で鉱山における児童労働などとともに、「先進国で最大数の“奴隷労働者”を抱える国」として名前が挙げられたのが日本であった。いわゆる売春に駆り出されるじゃぱゆきさんや研修制度悪用による外国人の低賃金労働者を指している。類似の問題は各国あるとはいえ、まさか日本が欧米各国をしのぐほど深刻であるとは、政府や専門家でさえも認識していないのではないだろうか。
 もう一つ紹介するのは、3月の国際女性デーにちなんである国際コンサルタント会社が発表した調査だが、上級管理職に女性がいる企業の率と女性上級管理職の割合の双方で、日本が世界で最下位となった(それぞれ25%、7%)。先進国だけを見ればこの結果は予想のつくことだろうが、驚くことにほとんどのアジア諸国は欧米よりも上位を占めている。上級管理職に女性がいる率ではフィリピン(97%)、中国本土(91%)、マレーシア(85%)がトップ3となり、フィリピンは上級管理職の割合は男女同率という。これでは、アジア的価値観が違うからとか伝統だからとかいう言い訳は全くなりたたない。

 また、海外で報じられているのに国内では話題になっていない日本の情報も結構ある。2月には南氷洋で操業中の日本の捕鯨船が火災を起こし、乗組員1人死亡、航行不能となった。グリーンピースが同船の曳航を申し出たが、日本側が拒否したという報道が各国であった。この火災の前に同船に環境団体が体当たりの抗議活動を行っている旨の報道は日本でなされたが、火災やグリーンピースの支援に関しては私の知る限り見ていない。

 私たちの中には、海外の情報や考え方は無批判に受け入れる一方で、日本のことを海外からとやかく言われるのを嫌う人が多いように見受けられる。確かに海外の日本報道には的を射ていないものも多いが、耳が痛いと感じるということはその中に認めたくないような鋭い指摘が隠されているからではないか。
 地域や社会の問題を正しく認識することはソーシャル・イノベーションへの第一歩であるが、そのためには思い込みを避け、自己を外から客観的に眺められる複眼的思考を養うことが欠かせないと思う。
待場智雄

posted by CAC at 13:22| Comment(0) | TrackBack(1) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/46106976
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック

靴を寄付するために起業したデザイナー「ブレーク・ミコスキー」
Excerpt: (記事要約) 2年前に一人の米国人デザイナーがアルゼンチンを訪れ、靴を買えない...
Weblog: 専門家や海外ジャーナリストのブログネットワーク【MediaSabor メディアサボール 】
Tracked: 2007-08-10 11:42
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。