2007年05月07日

 日本の伝統的「社会起業家精神」:『グンゼ』   服部 篤子『(CAC・立教大学大学院

 グンゼ株式会社の創業地である、京都府綾部市を訪れた。今は山間の地方都市だが、昭和初期に建てられた趣のある社屋、大正時代の建物は記念館に、100周年記念にかつての倉庫を改造した立派な博物苑、そして工場がある。株主総会を開催する講堂には、歴代の社長の肖像画があった。創業者波多野鶴吉は、この地域の蚕糸業振興のために「郡是製糸株式会社」を設立した。当時の何鹿「郡」の「是」−(方針、進むべき道)を見据えた起業の精神が社名にこめられている。110年前、明治29年、どのような想いで創業したのかを知り、そして、その精神がグローバル企業となった今もグンゼに受け継がれていることを認識する機会を得た。社会起業家精神は、日本企業の歴史に学ぶことができるのではないか。 創業者波多野鶴吉は、学生時代は都会で学び、教育者を目指しつつも、遊び暮らした様子が小説の主人公として取り上げられているほどである。思うように成功せず、地元に帰らざるをえなくなった。そこで、改めて地域を見直したのではないだろうか。「地元農家における養蚕の実態を見学したことを機に、地場産業としての養糸業の体質改善を決意。製糸業を起して地元の養蚕業を活性化させ、やがては蚕糸業を新興させることで地域社会に貢献したいという思いを強めていった」(グンゼ110年のあゆみp7)。

 当時は、この地域の生糸は質が悪く酷評されていたそうである。技術の習得と人材育成に力を入れたこと、特に、社員教育に非常に注力したことが記録に残っている。その結果、質の高い生糸の生産に成功し、地域の信頼を高め、現在のグンゼの「質のこだわり」につながっている。
 創業にあたって特筆すべき点に、「株券」がある。資金調達にあたって、一株20円を地元の養蚕家に買ってもらうために地域を回り、2年かけて資本金を集めた。養蚕家に配当金がわたり、製糸家と養蚕家、つまり、地域が共存共栄することを目指した。そのこだわりを持った会社の姿勢に感慨深いものがある。
 その後、会社存続の危機に直面した際、社員たちが自ら資金を出し合った。危機を脱し、会社側は、借りた資金以上のものを社員に返した、という記録があった。このような「信頼」関係を構築していたことを興味深く見学した。

 グンゼの工場では、「三つの躾」の張り紙が目に留まる。「あいさつをする」、「はきものをそろえる」、「そうじをする」である。現代においても行動規範として浸透している。
例えば、実際に、工場内は美しい。生地の洗浄過程において、床には水がしたたる。工場の床は「木」のフロアを維持しているため、迅速な清掃が不可欠の状態になっていた。効率性のみを考えれば手間のかかる木を用いることはない。あえて木のフロアにすることで人一倍清潔に保つための気配りが必要となり、その精神が商品の質に反映するのであろう。日常生活の言葉であるが、経営学の視点からも、大変理にかなった、利益を上げることにつながるものである。

  このように、グンゼの発展の一因に、従業員に浸み込んだ創業者の哲学、企業理念の継承を上げることができよう。そして、グンゼは、今後も経営理念を維持していくであろう。
 しかし、人的資源の今日的課題がある。雇用体系の変化に伴い、正社員と契約社員がグンゼ工場にも配置されている。企業の理念が社員まで浸透するのは、終身雇用制度の利点であったが、全ての関係者にグンゼの哲学をどのように浸透させていくのであろうか。

 一方、地域を変革しようとしたグンゼは、今、自らを変革しようとしている。これまでの標語に「不易流行」があった。グンゼにとって、創業の理念は変えることがなく継続されるものである、という「不易」。しかし、時代を読み、時代のチャンスをつかむ柔軟性をもって改革を推進する「流行」の両方を併せ持つことを意味している。現在、グンゼは、肌着をはじめとした衣料だけではなく、技術開発力をいかした分野へと進出している。我々がよく飲むペットボトルに巻いているフィルムや、タッチパネルなど、様々な事業展開が進んでいる。ヒヤリングの中で「変わる勇気、変える力」、「進まなければ変わらない(不進不存)」といった言葉を見聞きした。消費の激しい変化の中で、継承すべきものと、変革していくものとを見極めていることが強く感じられた。
 改革、イノベーションは、経済界の中でも緊要な言葉として用いられている。伝統と質へのこだわりの企業の改革に注目される。

 社会起業家精神をもって創設された組織はどのような発展過程をみるのか、社会起業家精神をどのように新規事業に活かすのか、社会起業家精神は、企業や社会に影響を与え続ける要素となりうるのか、グンゼをはじめ、日本の伝統的な企業から社会起業家精神の今日的意義を見出すことを今後の課題としたい。


*立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科CSRインターンシッププログラム調査にて、株式会社グンゼを訪問した見学、ヒヤリングに基づく私見。
posted by CAC at 13:09| Comment(3) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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