2007年05月07日

社会起業家のための政策分析入門G  『“殺されない”ためのリーダーシップ論』 服部 崇(APEC)

社会起業家は、目的達成のために組織や社会の中でリーダーシップを発揮しようとする。しかし、現実には様々な段階で各方面からの反対に出会うことが多い。社会起業家は、現状を打破し理想を実現するために行動することには危険が伴うことを知るべきである。社会起業家は(文字通りあるいは抽象的な意味で)“暗殺”される、“抹殺”される危険に晒される。いかにしてこの危険を回避し、リーダーシップを発揮するか。今回は、“殺されない”ためのリーダーシップとは何か、について考察する。マハトマ・ガンジーは暗殺された。マーチン・ルーサー・キング・ジュニアも暗殺された。社会問題に立ち向かうリーダーたちは、その目的達成に向けた行動の途上で、生命を奪われている。仮にこれらは極端な例だとしても、社会的に認知されていない分野で行動を起こすことは反発を惹起しがちである。

変革においては、変革に伴ってメリットを享受する者がいるのと同時に、デメリットを被る者が生じることは避けられない。組織を改革しようとして行動を起こしたとしても、組織内の抵抗にあって提案は葬り去られ、左遷されることになるかもしれない。社会に変革をもたらそうとしても、受け入れられずに無視されるか、逆に反対する者が積極的に潰しにかかることになるかもしれない。

Ronald A. HeifetzとMarty Linskyは、共著『Leadership on the Line 』(Harvard Business School Press, 2002)において、こうした問題を真正面から取り上げた。彼らは、危険はリーダーシップに必然的に伴う性質の問題であるとする。変化が人々の抵抗を生むのは、それが人々の生活習慣、信念、価値に関わるためである。変化は人々に喪失、不安定感、不忠義を強いる(以上、第一章)。

改革に反対する者はあらゆる手段で抵抗を試みる。著者たちは、こうした抵抗に対処する手段として「温度調節」をはかることを勧めている(第5章)。

温度を上げるには、

1. 困難な課題に注意を向けさせる
2. 心地よい水準以上の責任を与える
3. 対立を表面化させる
4. 迷惑者や変人を守る

温度を下げるには、

1. 問題のテクニカルな側面に取り組む
2. 問題を分割し、スケジュール、意思決定ルールを作り、役割分担を明確化するなど、問題解決に向けたプロセスを構築する
3. 自らが責任を取る旨を主張する
4. 仕事以外に注意を向けさせる
5. 規範や期待に反することを行うプロセスをスローダウンさせる

以上のような処方箋を提示している(同著、111頁)。この処方箋がすべてを解決してくれるわけではない。しかしながら、反対者の抵抗に対処するためには、取りうる何らかの手段を検討することの意義を認めないわけにはいかない。

また、この処方箋はあくまで抵抗に対処するための手段・技術を述べているのであって、自らの信念・主張を曲げることを推奨しているわけでもない。とはいえ、社会の変革を推進する場合、自らが生き残るために、従来からの信念・主張を曲げるか否か、自らの行動を制限するか否かという選択を強いられる場面に直面することになることは、十分に想定し得る。
 
自己の生存(あるいは組織内や社会的な地位など)のために、信念・主張を曲げたり、行動を制限してしまって良いのかとの疑問はあり得よう。さりとて、社会変革のために生存を犠牲にせよとは他人には言えないし、言うべきではないであろう。したがって、自己の生存と社会変革の両立は、どこかでバランスを取らざるを得ないように思う。社会改革を進めながらも自己の生存を危機に陥れないように自己防衛に気を配ることは、必須であると考えるべきである。
posted by CAC at 13:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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