2005年05月26日

市井のソーシャルイノベーターたち C

コミュニティ・プロデューサーを考える

吉田信雄

先日、友人の結婚式でのこと。

日本NPO学会理事、京都ソーシャル・アントレ会副会長、地方自治体の各種委員等を兼任され、現在、コミュニティ・プロデューサーとして活躍されている浅野令子さんとお話しする機会があった。

で、ボクは浅野さんという方、実は初対面(どこかで会っているかもしれないのだけど)で、ただ、「有名な方だったよなぁ」というくらいの認識しかなかったのだけど、話をしているうちに、意気投合し、「そこが難しいんだよねぇ」という結論になったので、その話の流れを、今回のコラムとさせていただくこととする。



コミュニティ・プロデューサー
−社会起業のためのソーシャル・キャピタルを創造する−

浅野さんは、

社会起業のためのソーシャル・キャピタルを創造することを目的に、

若者の地元企業へのインターンシップなどを通じて

世代等様々な壁を超えた新しい交流の機会を企画・運営し、

京都にソーシャル・イノベーションを起こすための仕掛けを創りだす

「コミュニティ・プロデューサー」として活動を展開中である。


いま、地域コミュニティを語る意味


さて、「地域のコミュニティ」を舞台にした活動は

何も新しいものではないが、

いま、「地域コミュニティ」を語る意味について整理をしてみたい。

例えば、神奈川県大和市では、

「地域のことは、地域で考え、
 地域自らの責任で決める(自己決定・自己責任)」

という基本的な考え方に立ち、

2005年4月から「大和市自治基本条例」を施行している。

こうした大和市のような動きの背景をボクなりに整理すると、

以下のとおりとなる。


国が地方に権限を委譲するダイナミックで大きな波


いまの日本が、

地方分権という変化の時代の中にあることはいうまでもない。

2000年4月に地方分権一括法が施行され、

国と地方自治体の役割分担の明確化、

機関委任事務制度の廃止、

国の関与の法定主義、

国地方係争処理委員会の設置等により、

地方自治体の役割の重点は、

国や都道府県の包括的な指揮監督に従い確実に事務を処理することから、

自らの責任と判断で地域・住民のニーズに主体的に対応していくこと

に転換した。

三位一体改革、

市町村合併の推進や

広域自治体の見直し等を通じて、

「国から地方へ」という構造改革は、

具体的な取組みを通じて動きだしている。

例えば、平成11年3月31日に3,232あった地方自治体は、

平成17年5月1日には、2,378まで削減し、

平成18年3月31日には1,822まで削減されると想定されている
(以上、総務省のホームページhttp://www.soumu.go.jp/を参考)。


自らの手で行うという意思があるか試されている時代


こうした地方分権一括法以降の国全体の動きと

大和市のような地方自治体での動きを、

「地方自治」の理念である、

「団体自治」と「住民自治」という二つの理念の実現

という枠組みで整理したい。

地方分権一括法以降の三位一体改革、

市町村合併の推進や広域自治体の見直し等とは、

地方分権を実現するための「団体自治」のしくみづくり
(国の行財政改革の受け皿づくり)

を目的とした取組みである。

その一方で、大和市のような

「地域のことは地域で考え、
 地域自らの責任で決める(自己決定・自己責任)」

という基本的な考え方に基づく取組みは、

「住民自治」の理念の実現
(新しい地域の協治(ガバナンス)の創造)に向けた取組みである。

つまり、いま「地域コミュニティ」を語る意味は、

国レベルで地方分権に向けた「団体自治の制度改革」が進む中で、

地域の住民が改めて

「自分たちの地域をどのようにしたいのか」という「意思」を表現し、

「それは、他人がしてくれるのでなく自らの手で実現していく時代である」

という文脈の中で理解されるべきものなのである。


創造者にはビジネスの能力が求められている


「官」と「民」の関係の変化、

市民・NPO活動の活発化などを背景に、

地域コミュニティの創造者を考えたとき、

それがイコール地方自治体であるという認識はすでにないと思われる。

そして、ボク等CACとしては、

それは社会起業家と呼ばれる人たちが出現することで、

具体的な取組みが実現されるのだと主張をしてきた。

つまり、新たなる地域コミュニティの創造者には、

ボランティア活動のように

送り手側の「想い」の表現活動・実践活動の重要性は認識しつつも、

具体的に社会のサービスとして確立していく上では、

それがビジネスとして成り立つ必要性も同時にある

ということを主張してきたのであり、

浅野さんとの話で盛り上がった部分は、

まさに、「ビジネスとして成り立つ」ということの難しさである。


儲かってますか?


ボクは、大きく括って

市民活動と呼ばれるような

表現活動・実践活動をしている人たちと会うときは、

お金の話をすることにしている。

どんな想いで活動をしているかという部分は大変重要だし、

「どうしてそんなことを始めたのか」という

それぞれの人生のストーリーを聴くのも大変素敵なことなのだけど、

「それはそれ」として、

でも重要なのは「具体的に実現をする」ことだと思っているからだ。


コミュニティ・プロデューサーのビジネス・モデル


さて、本題にもどって浅野さんとの話なのだが、

コミュニティ・プロデューサーって具体的にどんな仕事かというと、

地域コミュニティのネタで企画書を書く、

スポンサーを探す、

仕事の発注(ボランティア・アクティビティでも良い)の仕様書を書く、

全体の進行管理・苦情等の対応をしながら企画を実行させる、

スポンサーに報告する。

まぁ、こんな感じだと思う。

こういう仕事で食べていくってことは、

スポンサーから自分の取り分を含めてお金をいただくことなのだが、

そこまで、自分のブランド・商品価値を勝ち取ることは易しいことではない。

コミュニティ・プロデューサーは、

起業したての場合、

仕事の発注先に泣いてもらったり、

一般の方に興味を惹いてもらえるような

ボランティア活動を開発したりすることで、

コストをさげなけれはビジネスは成り立たない。

また、スポンサーに対して「地域コミュニティのネタ」を話すとき、

最終的にスポンサーに対し、

ビジネスの視点に立って納得していただく企画でないと、

なかなか協力はいただけない。

「地域の企業市民として…」なんてお説教も

スパイスとしてはいいと思うが、

最初から最後までそれでは「良いお話を聞かせていただきました…」

というレベルを超えることは出来ない。

企画に「オカネの匂い」がしないと、

宗教家の説法と変わらなくなってしまうのだ。


独占状態のコミュニティ・プロデューサーのマーケット


コミュニティ・プロデューサーが

起業をしようとしているマーケットも厳しい状況にある。

地域には、商工会議所、観光協会など様々な非営利組織が既にあり、

コミュニティ・プロデューサーのビジネス領域とほぼかぶっていて、

オカネの流れが出来上がってしまっていて、

「新規参入」は不可能に近い状態にあるのである。

ただ、既存の組織が新たなる地域コミュニティの創造者であるかといえば、

それも期待はあまりできない。

既存の非営利組織は、

地方自治体との良く言えば協働関係、

悪く言えば下請け関係が出来上がっていて、

社会起業家にとって大切な「想いを表現する」という部分に

あまり期待が出来ないのが現実だからである。


コミュニティ・プロデューサーにマーケットを解放してください


ということで、

浅野さんとは以上のようなぼやきで共感したのだが、

本稿は、最後に政策提案をさせていただくこととする。

どうしたら地域にコミュニティ・プロデューサーが育つのか。

答えは簡単である。

マーケットを解放するのである。

具体的には、地方自治体が自ら取組んでいる事業について、

改めて企画段階から抜本的に見直しを行うことを決定し、

コミュニティ・プロデューサーに対し、

企画の提案を求めることを始めて欲しい。

また、地方自治体が

既存の非営利組織が独占している事業を見直して、

コミュニティ・プロデューサーも参入できるようにして欲しい。

ボクは前回、「庁内ベンチャー制度」について書いたが、

あのような制度も役所の職員だけを対象にするといった狭い考えではなく、

広く一般からも公募をしてみたらどうだろうか。

いま、地域にコミュニティ・プロデューサーが必要であることは、

「地域コミュニティ」に新たな創造者が必要な時代である

ということで述べさせていただいた。

本稿を読んで共感いただいた地方自治体の関係者に、

新たな政策として採用いただける日を待つこととして、結びとしたい。

posted by CAC at 18:30| Comment(0) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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