2005年05月26日

■ 私のスマトラ地震救援活動

溝田弘美  高齢社会をよくする女性の会ニューヨーク代表
 2004年12月初旬、スリランカで家族とともに休暇を終えた私は、ニューヨークに戻って間もなく、津波のニュースを知った。神戸で大震災を経験した私は、5年前ニューヨークに移ったとき地震から解放されたと思ったが、スマトラ地震はスリランカ人と結婚した私にとって他人事ではなかった。

 人口1800万人、北海道ほどの国土をもつスリランカは、約3万人の死者と100万人のホームレスという被害に対応できず、津波初日から国際社会に救援物資の要請を行った。日本政府は各国の中でも最高額の援助金を拠出したが、一般市民として私たちはアメリカで何ができるのだろうか?

 津波から最初の2日間は、夫の親戚や友人からの電話連絡とメディアを通じた情報収集に追われた。まず、ニューヨークに本社を置くスリランカ人のIT企業が、1月5日に救援物資を送る船を出航させるためスリランカ仏教寺院を通じて行った寄付活動に賛同した。物資は乾燥食品、新旧衣類、毛布、お金の4点。私は衣類を主に集めていたが、津波後から5日目にニューヨークにある仏教寺院にクリントン前大統領夫妻が激励に訪れ、メディア効果もあって既に十分な物資が届いたという。翌日の元旦にその寺院に物資を届けに行った際、どこから集まってきたのかと思うほど大勢のスリランカ人が訪れ、受付で小切手を切っていた。国勢調査によれば、アメリカに住む日本人796,700人に対しスリランカ人は2万145人、ニューヨーク市内では日本人が22,636人いるのに対して2,033人という小さいコミュニティである。しかし、日本の仏教寺院がニューヨーク市内に1カ所しかないのに対し、スリランカ寺院はニューヨーク近辺に3カ所あり、コミュニティの拠り所として、社会的、政治的に影響力をもち、相当な動員力があった。
 
  次に私は、義援金活動に取り組んだ。その理由は、スリランカのために何かをしたいという思いに加え、多くの友人からどこに義援金をすれば最も有効的なのかという質問が相次いだことにある。スリランカ仏教寺院への寄付は、救援物資と違い、義援金の使途を追うことは難しい。また、仏教徒のみに使われることに納得がいかなかった。アメリカからの送金では現地に行ってチェックができないため、信頼できる相手先でなければ寄付者の同意が得られない。国際社会はスリランカ政府に多額の援助金を送っているが、政府機関内における透明性、汚職に対する市民の不信は大きく、その使途をめぐってスリランカでデモ行進も行われた。

 寄付先は、透明性が強く、寄付金の効率的な使途に即効性をもち、完全に政府から独立したCBO(Community-Based Organization)で、地域に密着した社会貢献活動をしているスリランカ最大のNGO「サルボダヤ」www.sarvodaya.org に決めた。サルボダヤは、国内で47年前から孤児、障害児・者、高齢者支援や村おこし活動を行ってきた。村おこしとは、将来社会の中心となる若者を教育し、きれいな水、適切な住居、情報、エネルギーや教育を得るために自発的に活動を行うよう支援するものである。

 募集は経費をかけないよう、小切手で集めることにした。送付先は、ニューヨーク近郊で日本人向けコミュニティ誌を発行している会社のP.O.BOX。新聞社、コミュニティ誌など数社が、義援金キャンペーンの内容を掲載してくれた。
 
 寄付要請を始めた頃、他国と比較して日本人の寄付額が少ないというニュースが流れたため、寄付は集まらないという覚悟はしていた。結果から先に言えば、昨今の日本のCSRや社会貢献ブームは、それらに関心がある人と無い人を二分しているということである。寄付者が小切手に同封したメッセージの多くは、「義援金活動をしてくれてありがとう」、「被害者のために何かしたかったので募金ができてうれしい」という内容のものであった。全く見ず知らずの人でも、コミュニティ誌を見ただけで、2〜3万円の小切手を送ってくれた。

 一方、結果として寄付をしなかった人に寄付要請をした際の返答は、「寄付先が信用できない」、「新潟地震に寄付をしていない手前、他国にできない」、「義援金の送り方がわからない」、またはノーコメントが多かった。アメリカでは、支払いをする際、小切手を送る方法が一般的で、金額、署名をして封筒に入れてポストに入れるだけ。切手代は現在37セント(40円位)で日本の振込料より安い。寄付先によっては税の寄付金控除という特典がある上、郵便局や銀行に行く必要はないはず。援助は政府任せでよいという理由も、日本の税金を払っていないアメリカ在住日本人には通用しない。残念ながら、寄付をしない人から、寄付金の使途、その効果や効率に対する質問はでなかった。

 私はここで日本人が冷たいと結論づけたくない。スリランカで私の日本人の友人が津波にのまれて死亡したが、被害者も多国籍で、世界中の人が同時に悲しみ、支援に動き、かつてないほどの多額の寄付が集まった。21世紀になっても戦争を繰り返している不安定な世の中であるからこそ、世界の人が一丸となれたのであろう。その中で、無関心な日本人がいるのは寂しいが、今回のような私の小さな義援金活動でも繰り返し行うことで、より多くの日本人が海外の救援に興味をもってくれると信じている。
posted by CAC at 22:32| Comment(1) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
出ましたね、サルボダヤ運動!
オウム事件以来、すっかり宗教アレルギーだった私の意識を変えさせたのが、このサルボダヤ。宗教って、こんなに実社会で役に立つのかと、目から鱗が落ちる思いでした。

東工大助教授上田紀行氏(今年5月〜スタンフォード大学仏教研究所の客員研究員)の著書「がんばれ仏教」を読んで、その活動を知り、最近になって創設者のDr.A.T.Ariyaratne氏の来日講演を聞くことができました。
厳しい階級の残る社会で当時高校教師が始めたこの活動は今や世界的な評価も高く、11,000のスリランカの村々だけでなく、世界に飛び火しています。スウェーデンで地域開発を行っている知人に紹介したら、喜んでくれました。
http://www.sarvodaya.org/about/strategic-goals/

ご主人がスリランカ人なら、もっと詳しい内情をご存知だとは思いますが、そのサルボダヤを寄付先に選んでいただいたことは、特定の信仰を持たない私としても大変嬉しく思います。

このスリランカのサルボダヤに、ブータンのGNH(Gross National Happiness)。21世紀社会を作るのはアジア的思想ではないかと思います。
ちなみにGNHについては、6月下旬にカナダで第二回目の国際会議あり。
http://www.sierraclub.ca/national/getinvolved/event.shtml?x=799
Posted by 斉藤哲也 at 2005年05月29日 14:42
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/3910137
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。