2006年11月15日

<NO.8> ノーマライゼーションへの二つの戦略

比留間雅人

ぼくのこの担当連載の主旨は、日本各地にある個人ホールオーナーを見つけてきて話を聞き、その取組みの中から、「文化」をめぐる社会的課題や、芸術というトコトン私的な趣味が社会と切り結ぶ局面、あるいは「事業」一般のそもそものありよう・・・等々をゆるく愚直に見ていきたい、というものであります。


これから数回は、ちょっとこのテーマをオヤスミしたいと思います。まだ三つした取上げていないのですが、この夏「この状況、なんかの啓示なの?」と思うほど、あるテーマに関する情報が様々な角度から入ってきたからです。

それは、タイトルでお気づきのように、「ノーマライゼーション」です。

職業柄、さまざまな社会的課題やそれに対する活動(主体)に接する機会に恵まれています。未開の荒野を開拓する社会的起業家の皆さんに深い感銘を受けることもしばしばです(必ずしもベンチャー起業家ばかりではありませんよ。組織に属している「社会的起業家」の静かな凄みってやつも重要。でもやっぱり同じような組織人じゃないと分からないかも知れないけれど・・・)。しかしいかんせん浅く広くの経験にしかなりません。

ところがこの数ヶ月、知的障害者の就労問題を中心に、ノーマライゼーションについて深く考えさせられる機会をさまざまな方から頂きました。

この問題、もちろん喫緊の課題であるのは間違いなく、より多くの人の関与を必要としています。しかしそうした切迫さの一方で、こと人間に直接関わる問題だけに、「個人対個人の問題」と「個人対社会の問題」という、次元を異にする二つの問題が混在というか短絡されます。このことが、古典的だけど非常に深−い問題をぼくに提起しているのです。


ノーマライゼーションという大テーマを考える上で、いわゆる「アウトサイダーアート」が非常に重要な機能を果たすのではないかと考えています。「芸術と社会」(別に「社会と芸術」でも構いませんが)なんて言うと、どうしても「社会のためになる芸術」か「芸術のためになる社会」かといった恥ずかしい話になりがちです。そんな問題はどうでもいいのですが、そうではなくて、まさに芸術と社会が切り結ぶ局面に、アウトサイダーアートがあるのではないかと思うわけです。もちろん、それはノーマライゼーションへの大きな一歩となるに違いない。このテーマは、実は、個人ホールオーナーのインタビューと完全に連続しています。地に足のついた個人と地に足のついた社会の成立こそが健全な自尊心を生み、それはノーマライゼーションそのものだろう、ということです。


この数ヶ月の間にお話を伺う機会を頂いたのは、そのアウトサイダーアート関係の方以外に、当然ですが就労支援機関・組織のジョブトレーナ、養護学校の先生ほか教育関係者の皆さん、親の会の皆さん、職域開拓を念頭において事業開発を進めているNPO、特例子会社の方々、そして何よりも知的障害者の皆さんです。同じ問題に対して全く異なる角度から取り組まれている実務家の皆さんに短期間のうちに接点を頂いたことで、ぼくがどのように理解を深め啓蒙(!)されたかをここで整理することは、自分の無知をさらすことにもなるでしょうけど、ひとつのケースとしてひょっとしたら参考にしていただけるものになるかもしれない・・・そんなことを考えてます。


タイトルについても少しコメントしておこうと思います。「ノーマライゼーションへの戦略」。これはぼくのこの夏の勉強の具体的な結果です。今現場で粛々と遂行されている具体的な取組みを伺うなかで、皆さんいろいろな困難に直面していることを、しかし清清しくお話になっていました。その困難の大半は、実務家個人やその組織がクリアできるようなものではなく、社会の仕組みに起因するもののようです。そしてなぜ清清しいのかといえば、各現場で「解決可能な困難」と「解決不可能な困難」を仕分けし、後者については全く別の方途(別の事業、別の組織、別の人々・・・)での解決を考える。言い換えるなら、今の取組みは一体ノーマライゼーションの何に貢献するもので、何に貢献できないのかを予め自覚しているのではないか、だから反省はあっても無為な逡巡はないのだろう・・・そんなふうに考えています

ぼくがここで戦略として提示しようとしているのは、実務家の皆さんがおそらく取組みの位置づけを考えるうえで用いているフレームです(だといいなぁ)。それは大別して二つに分けられます。だから「二つの戦略」なのです。次回から詳しく考えてみたいと思います。


posted by CAC at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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