2006年11月15日

<NO.8> エコ・レゾナンスでグリーン直接金融に乗り出そう 第二回

坂本 忠弘(元財務省)

○ 地域でつながるコミュニティ・ファンド

 自分ひとりで具体的な投資先の選定やリスクの負担を負うことなく、自らのお金の行き先について何らか意志の込めた選択を行いたいというものの受け皿として、コミュニティ・ファンドが各地で広がりつつある。
 地域やテーマを定めて趣旨に賛同する者が資金を拠出し、資金の提供の対象は必ずしもメンバーであることに限定せず、よいと考える事業を選んで出資または融資をするものである。寄付を原資として、収益性のない活動を行う団体などに助成するものもある。

 このようなコミュニティ・ファンドのアプローチを、より一般的な金融商品の中に組み込もうという動きもある。出身地・在住地などの愛着ある「御当地」に一部優先的に資金を回す、「御当地ファンド」というものである。この金融商品においては、一定の利回りを確保するため、全体の8割から9割は、資産運用のプロが社会性も重視しながら中長期の投資を行う。残る1割から2割は、それぞれのファンドの御当地の地元企業に投資する。その選定は、地元の事情に精通した「目利き衆」の意見を聴きながら行う、というものである。

 一般的な投資家に社債を引き受けてもらうことは難しい地域の中小企業には、御当地ファンドの資産運用の対象となるのは、資金調達の先が広がるチャンスとなる。利回りが低くとも愛着のある地域の地元企業を応援したいという希望が強ければ、御当地への投資割合を3割、4割、5割と増やすことも考えられる。

 これらは、ストレートな直接金融とはいえないが、地域やテーマなどの設定の仕方により、一人ひとりの意志を組み込む間接金融ということはできる。


○ 個人投資家が主役のリレーションシップ・インベストメント

 今や個人投資家もデイトレーダーとして登場している一般的な株式市場や債券市場とは、趣きの異なる株式や債券への投資も見られるようになっている。持ち続けることに意味を感じる株式投資や、社会的事業に対する思いを込めた債券投資や出資というようなものである。

 非上場株式の売買取引を行う「グリーンシート」において17年3月まで設けられていた「リージョナル」は、地域の企業への株式投資の場づくりをしようとするものといえる。例えば、地元の名物の料理屋・レストランが、拡張・新装のために資本を増やすことを考えるというような場合、馴染みのお客さんたちに投資をしてもらう。一定の会計上のチェックと事業・財務等の情報公開を行いながら、フェイス・トゥー・フェイスの株式投資を行うもの、市場での売買を通じて利益を得ようとする株式の取引に比して、より関係性を重視する株式への投資の場を創ろうというものである。これは、「拡大縁故型投資」ともよばれている。

 福祉や環境などの事業を行う資金調達のために、「市民債」を発行したり、「市民出資」を募る動きもある。

NPO活動の草分け的存在である奈良のたんぽぽの家が、障害者の芸術活動を支えるアートセンターの建設の資金調達のために発行している「市民債」を見てみる。一口1万円、期間10年で、利子はつかない。これまで、10年経って返還を求めるのは2割程で、残りの人はそのまま投資を続けている、とのことである。「利子とは違う満足」もあるということだろう。

環境分野では、市民風車への出資がある。「自然エネルギー市民ファンド」が窓口となり、市民から募った出資を基に、北海道・青森・秋田で既に3つの風車が発電を始めている。「地球温暖化を防止したい」「未来に美しい地球を残したい」「社会貢献できる資金運用をしたい」など、市民の願いをエネルギーづくりを通じて実現するもの、とされている。そして、市民風車への出資の特徴として、クリーンで安全な自然エネルギーの普及に参加・貢献できること、自分の大切なお金が自分の望む社会的意義のある事業に全額利用されること、出資した風車の支柱(タワー)に名前が刻まれること、市民風車と周辺地域を訪ねる旅の案内があること、とされている。これらの市民風車への出資の償還は、事業実績により、元本が保証されるものではない。収益状況により利益分配を受ける可能性もあるが、まずは風車への刻名などの思いを込めた出資を体現する「お金ではない配当」がある。


 太陽光発電に関しては、長野県飯田市において、「おひさま進歩エネルギー」というユニークな会社が設立されている。公共施設や個人宅に、「市民出資」による拠出を加えて、太陽光発電施設を設置している。また、商店街において、省エネルギー事業に取り組んでいる。発電した電力の収入や省エネルギーで節約された費用で出資金を償還していく仕組みである。市民出資で利益を地域や市民に還元する、とされている。

 地方銀行等が行う「間柄重視の地域密着型金融」は、リレーションシップ・バンキングとよばれている。それでは、上記のように、賛同する社会的なテーマや地域的な課題に関して、個人投資家が自らの関わりを重視して価値観・感性に基づき投資先を選ぶものは、リレーションシップ・インベストメントとでもよべるものではないかと思う。

○ 持ち寄りで挑戦する公開起業オークション

 グリーンシートや市民債・市民出資よりも、更に草の根の直接投資としては、「公開起業オークション」という興味ぶかいものがある。

 WWB(女性のための世界銀行)ジャパンなどが各地で開催しているもので、地域・社会の課題を解決するための新たな事業の起業をめざす人がその想いと事業プランを発表し、集まった人たちのオークションにかけるというものである。参加者は、入場の際に、三つのプラカードを渡される。発表者が起業するために足りないもの、支援してほしいことの呼びかけを聴いて、自分にできるコミットメントをしたいと共感した人は、プラカードを挙げて応援を表明する。プラカードの一つは、「人」、自分の人脈を紹介することなど。一つは、「物」、自分の持っている物で使い方次第でより価値ある活かし方ができる物を提供すること。一つは、「金」、事業に必要な資金を提供すること。

 地域の人たちが自分の持つ様々な「財」を、あるいは、その力が十分に引き出され活用されていない地域に存在する様々な「財」を、その起業家の事業に活かそうとする、参加型の起業支援の取り組みといえる。

 また、ソーシャルベンチャー・パートナーズ(SVP)というものも、日本で動き出そうとしている。

 米国等で展開するSVPをモデルに、社会起業家やその事業に関わる人を中心に、東京ソーシャルベンチャーズ(SVT)が立ち上げられている。ビジネスや社会分野での専門性を持った個人が出資し、ファンドを組成する。そして、社会的な起業や挑戦を支援するものであるが、お金のコミットメントだけではなく、自分の専門性を活かしたスキルの貢献や、一緒に汗を流すことを通じて、地域やビジネスのあり方、私たちの毎日に変化をもたらすことをめざしている、とのことである。

posted by CAC at 23:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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