2006年06月25日

<No.7> エコ・レゾナンスでグリーン直接金融に乗り出そう

坂本忠弘

銀行への預金と銀行による融資を中心にしたこれまでの日本の金融に、みなさんは満足しているだろうか。お金の出し手として一人ひとりが、自分の価値観や感性に基づき投資先を選び、「お金に意志を持たせる」ところを大きくすることが、新しい金融の流れを創ることになる。また、投資先の事業・活動とお金だけではない様々な「関わり」を持つ動きや、お金ではない「配当」を求める考えが出てきている。環境分野の例も交えて、自分のお金の行き先をしっかり見つめて、時にともに行動していく仕組みについて考えてみたい。
(本稿は筆者の個人的な見解をまとめたものである)

第一回
(「お金に意志を持たせよう」)

 「直接金融は、自らのお金の行き先に、自分の意志や自分の価値観を込めること」、さわかみ投信の澤上篤人さんの言葉である。
 「お金に意志を持たせよう」、17年12月に開催された、NPOバンクフォーラムのメッセージである。
 「銀行は、もっと利用者の方を向いた、気の利いたお金の貸し方をしてもらいたい」、身近なところで銀行の融資について個人的に意見を聴いた際に、しばしば出てきた言葉である。「気の利いたお金の貸し方をして「もらいたい」」とのことであるが、多くの利用者が、預金者であり、お金の出し手のはずである。しかし、この言葉は、その声がお金を託した銀行にしっかりと受けとめられていないとも聞こえるものである。
 「金融を手作りする」、17年4月から5月にかけて日本経済新聞に連載された、藤井良広さんの「ドキュメント挑戦」のテーマである。「預金の使いみち、自ら決める」「金利よりも、お金を生かしたい」、「配当は人が育ち、地域が育つこと」などなど。自分のお金が地域・社会を豊かにしていくのが見えるようにしたいと、自ら意志を込めたお金の流れを創っていこうという動きが紹介されている。

(直接金融で創る「顔の見えるお金」の流れ)

 「貯蓄から投資へ」、そして、なぜ「直接金融」なのか。多言は要しないと思うが、右肩上がりの経済成長の終焉、中央集権での画一的な誘導行政の終焉というような、時代背景の変化がある。
 間接金融は、社会全体として設定した目標、同じような質の画一的なモノやサービスの生産を効率的に行うこと、大量生産・大量消費の社会を実現するのに適したものといえよう。しかし、資金の出し手の一人ひとりの「顔が見えない」お金の流れである。また、バブル崩壊に伴う不良債権問題において顕著に見られたように、ややもすれば横並び的に似たような行動をとる、間接金融の担い手の銀行等に、リスクを集積するものでもある。
 直接金融は、社会の中で多彩な目標、それを実現する色々なやり方について、一人ひとりの選択と参画の機会を増やし、「顔の見える」お金の流れを創るものといえよう。それは、社会全体の中で、自らのお金の行き先、使いみちについて、それぞれの当事者意識と満足度を高めるものである。そして、投資先に関して一人ひとりの判断に委ねることで、社会全体の中で多様にリスクをとることにつながるものでもある。
全国的に足並みを揃えて同じような物的水準を上げるための経済成長を追い求めていくのではなく、環境をはじめとして教育・福祉・まちづくりなどに関する地域・社会の多様なニーズに対応していくためには、公共サービス・社会的事業などについて、一人ひとりが関わりを深めていくことがますます大切になってきている。公共サービス・社会的事業の担い手は、行政・役所だけではない。
様々な新しい公共・社会の担い手に、直接金融あるいは直接金融により近い手法でお金の流れを創っていくこと、本稿では、環境分野での事例を交えながら、その全体像について若干の考察を行っていくこととしたい。
直接金融の動きが広がり、より多くの人が、それぞれ自分に合った範囲で、多様なかたちでリスクをとることが、多様なチャレンジを後押しすることにつながるであろう。

(間接金融から直接金融へ−リレーションシップ・バンキングからリレーションシップ・インベストメントへ、そして、持ち寄りで未来を創る動きへ−)

○ 投資信託を通じた社会的責任投資

 筑紫みずえさんのグッドバンカーや秋山をねさんのインテグレックスに代表される、企業の社会的な責任(CSR)に関する評価を組み込んだ、社会的責任投資(SRI)を創る試みが、環境分野を中心に90年代後半から注目される動きになっている。環境に配慮した事業・経営を行う企業に投資するファンドに相当のお金が集まり、それが幅広い企業の経営理念やコンプライアンス姿勢の変化につながりつつある。
 冒頭に紹介した、さわかみ投信も、社会性のある企業が長い目で見て社会から必要とされ業績も上げていくとし、「自分よし、社会よし」の投資、個人投資家の中長期投資を提供するものとして、静かに若手中堅のサラリーマンなどに広がりを見せている。
 これらは、これまで意識しなかった投資行動を、生活者・利用者の観点を重視する立場からの調査・評価を参考に判断することで、社会の中のお金の流れを変えていこうというものである。そして、一般的な投資行動の目に見える変化を通して、社会の価値観の変化を演出し、企業の事業・経営を変えていくものといえる。

○ 証券化による直接金融へのアクセス

 大手企業と異なり直接投資の市場にアクセスすることが容易でない、中小企業がまとまることにより、資金を調達することがなされている。銀行等の中小企業への融資や中小企業の社債を集め、それら債権・債券をパッケージとして証券化するものである。
 このような手法を活用した「地域発」証券化については、東京都でいち早く始められ、先駆的な県・市が続いている。複数の自治体が連携をとって証券化を行う例も見られる。例えば、横浜市では、「横浜型債券市場」として、地元の中小企業の資金調達と企業発展を支援する独自の取り組みが行われている。(中略)無担保・保証人不要の事業資金の確保や、投資家としての市民の参加を促し、中小企業の発展を市民が応援する市場にしたい、としている。
 一定数以上の中小企業に関する債権・債券を束ねて証券化することで、各々の中小企業の不払い等の影響を全体の中でより小さなものとできる。また、多数の投資家が小口化された証券を分割して保有することで、一人ひとりに及ぶ影響をより小さなものとできる。直接投資に伴うリスクが個々人に過度に集中することなく、リスクを適度にマネジメントできるようにするものである。
 証券化の手法は、中小企業等の直接投資の市場に単独では参画できないもの、私募債等への直接投資に単独では参画しづらい個人投資家、双方に、直接金融へのアクセスの道を拓くものといえよう。

posted by CAC at 12:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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