2005年02月03日

年明けに徒然と思ったソーシャル・イシューのお話〜Fast Company誌の「ソーシャル・キャピタリスト・アワード」と Forbes誌の「インベストメント・ガイド:チャリティ調査」を巡って〜

大西たまき  インディアナ大学フィランソロピー学科研究員
新年度が明けた。イラク戦争だ、ブッシュの再選だ、スーザン・ソンタグの死去だ、そして9/11ファンドの閉鎖だと立て続けの暗いニュースの中で、平和はどこへ行ったという感のアメリカ。こういう時は年明けを穏やかな心で迎えるべく、お気に入りのカフェのチェリー入りモカを片手に本屋に向かい、本と音楽に囲まれるひとときを過ごすとするか。

まずFast Company誌を手に取る、同誌とコンサルティング会社、モニターグループによる「ソーシャル・キャピタリスト・アワード」の発表があるからだ。今年で2回目となるこの賞は、ノミネートされた226の社会起業団体(半分は審査員の推薦、残りは自薦による)のうち審査に同意した118団体に対し、過去3年の財務諸表とForm990(NPOの税金申告書)の精査、インターネット上での調査、90分のインタビューが行われ、最終的に25のソーシャル・キャピタリスト(ここでは社会起業家に極めて近い意味で使っている)が選ばれるというものだ。評価基準は(1)社会へのインパクト、(2)目標、(3)起業家精神、(4)革新性、(5)持続可能性の5つだが、中でも(1)と(3)が重視される。
社会起業家は多くの場合NPOでもあり、その評価は営利企業と比べても極めて複雑である。ミッションの評価、社会へのインパクトなど、明確な数値化ができない要素があまりにも関わっているからだ。しかし、選考プロセスを見てみると、「緊急課題への行動力」「層状化されたインパクト」、「アイディアの波及効果」「持続可能性を高める為の財源の多様化」などいくつかの共通点が浮かび上がってくる。
いかに“ソーシャル・チェンジ・モデル”として、自分たちの団体・地域への直接的なインパクトだけでなく、場所、文化、時代を超えた体系的・層化的なインパクトを与え得る波及効果が生み出せるか。これはアショカ財団がフェローを選ぶ時の基準の一つでもあり(「それは新しいアイディアか」「その人はクリエイティブか」「その人は起業家精神があるか」「倫理は存在するか」に加え、「何がインパクトか、アイディアは他の場所にも波及可能なのか」を挙げている)、社会起業家の効果を事業規模だけで判断できない1つの理由だ。小さな事業規模でも巧みなアイディアと市民(ボランティア)の活用で、大規模なプロジェクトを回している所も少なくない。彼らは「世界の様々な問題を解決する為にグローバル・レベルで取り組む」(アショカ創立者ビル・ドレイトン)ためのネットワークを持ち、波及効果は国境を優に越える。アショカの事業費は35億円強と、他のNPOや財団と比べ大規模と言えない。しかしそのアイディアを知的資産としてフル活用、世界中に測り切れない影響を与えている。

一方Forbes誌の「インベストメント・ガイド:チャリティ調査」。同誌は毎年、個人・投資家相手にどこに寄付すれば良いかを示す指標として200の大型NPOを評価している。その基準は(1)チャリタブル・コミットメント(ミッションに関連するプログラムへの支出の割合。同誌調査の平均は84%)、(2)ファンドレイジングの効率性(寄付からファンドレイジング経費を引いた額の割合。平均89%)、(3)寄付者への依存度(事業予算と寄附額の比。平均89%)。基準は基本的に財務情報によるもので、ベター・ビジネス・ビューロー(BBBWise Giving Alliance)の評価方法に近い。

 私としてはこの2つのうち、Fast Company誌の評価方式に軍杯を上げる。「ソーシャル・キャピタリスト・アワード」に選ばれた団体のほとんどは、“a small organization with a big idea”つまり草の根の小さなNPOだが、彼らのアイディアはエキサイティングで、社会への波及効果が期待できるからだ。Wall Street Journal紙に度々で取り上げられたジュネーブ・グローバルなど、諸外国のNPO・NGOの活動に支援したい個人“投資家”へのコンサルティングを行うところも出ている。
しかし現実的には、多くのアメリカ人がForbes誌の様な評価を基に、支援先を決めている。歴史がある著名な団体には、ブランド力と安心感があるからだ。しかし、Forbes誌のリストの中に上っている超大型老舗NPOのネーチャー・コンサバンシーや、物品寄付調達のギフト・イン・カインド・インターナショナル等がベター・ビジネス・ビューローの基準に満たない(あるいは必要書類を提出していない)と判断されている現実はどう解釈すれば良いのか。アイディアとフットワーク、社会へのサービスとインパクトが非営利セクターの魅力であったはずなのに、エスタブリッシュメントとなった米国NPOの中には、ナンセンスな官僚主義で効率的経営を自ら妨げている所も少なくない。

ということで、なんだかもっと深淵な課題?に行ってしまった後は、思わずU.S. News誌の「2005年にあなたの人生を良くする50の方法」という記事に惹かれてしまった。ソーシャル・キャピタルを論じたハーバード大社会学者コールマンが「金融資本、人的資本を産み出す家庭は、最も重要なソーシャル・キャピタルである」と言った様に、個人のあり方は社会のあり方にとっても大切なのだ。
50の方法のNo.1は「優先順位をつけよ」、No.2「瞑想をしろ」。次にNo.10「仕事を辞めよ」。あれー、そこまでと思っていたら、No.16「もっとセックスしよ」、No.34「結婚しよ」。最近出た疾病管理・予防センターの調査では、結婚したカップルの方が肉体的にも精神的にもより健康で、また財政的にも豊かだそう。No.48「ボランティア活動にいそしめ」、これは自分自身の健康と精神状態を高めるもう一つの方法だ(ミシガン大学の調査)。そして最後に、No.50「他人を許せ」。
ということで家に戻った私は、心穏やかに我が家の観葉植物の水やり(No.12「植物を育てろ」)に励んだのであった。

posted by CAC at 16:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 財団・支援と社会起業家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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