2005年02月03日

こんなNPOって,あり?B マスコミを騒がせたNPOの事例

澤村 明   新潟大学経済学部

悪質NPOをマスコミも取り上げ出した
澤村 明

前回紹介したような「変なNPO」がちらちらと目に付くようになったためか,そうした「変なNPO」についての記事がマスコミに載るようになった。今回は,その早い例を三つ紹介し,少々コメントを加えたい。

「NPO『商売道具』の変−優遇欲しさ?に企業が続々」アエラ 2002年7月8日号,pp.74-75

 筆者が目にした中で最も早い報道である。ただ,この記事の趣旨はリードにもあるように「ボランティアと事業の境界線で,関係者の思惑が揺れる」ということで,前回紹介したような公序良俗に反するような事例ではない。たとえば引用すると:
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「NPOって儲かりますか?」
 東京水産大学客員教授の岩重慶一さんは唖然としているという(注=同氏はカンボジアNGOなどの主宰者)。この1年,そんな質問が急に増えたからだ。
 今年3月,パーティーで岩重さんは知り合いの社長とバッタリ会った。その社長の名刺には,NPOの文字が刷られていた。社長は,笑いながらこう話した。
「NPOの肩書きがあれば公共事業や援助金で有利なんだ」。
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 そして,特活法人が簡単に認証され,少々の税優遇があることなどから,「NPOのイメージと事業とが簡単に結びつかない」特活法人が誕生している,としている。ツーショットダイヤルや出会い系サイトを運営するNPOは,目的として「通信社会発展への貢献」を謳っているのだとか。
 この記事で取り上げらているNPOで,前回紹介したような系譜上にあるものとしては,さる「文化・教育における中高年齢層の再進出」を目的としたNPOがある。
 このNPO,高齢者向けの文学賞を制定,2001年に第1回を募集したとのことである。ただし,応募に際し入会金5千円と年会費6千円を支払う(さらに入会申込書の請求に千円かかる)。作品の審査料が1点あたり5千円。263編の応募があったというから,単純に計算すると,この文学賞関係で4百万円を超す収入があったことになる。そして大賞を出さなかったという。
 また紳士録の出版を計画しており,それに掲載を希望する者から掲載料を取るのだとか。
 このNPOの代表は,これを「事業」と考えており,その事業を子供に譲るに際して特活法人にした,と記されている。記事が事実であり,文学賞に関しては悪意の行為であるなら,これは詐欺に該当しよう。
 このアエラの記事では,以下のような前述の岩重氏のコメントで締めくくっている。
 「このままでは,いずれ官によるNPO法人の選別が行われ,真っ当なものまで悪影響を受ける。そんな可能性が,高まっている気がします」。

「NPO名乗る悪質商法に注意」日本経済新聞 2003年2月28日生活欄

 次に目にしたのが,この日経報道。NPOと名乗る団体に騙されそうになった,騙された,という「消費者からの相談が急増している」という記事である。多重債務,耐震診断,布団売り付け…いずれも,以前から詐欺行為が多かった分野で,被害者が信用するよう「NPO」と名乗る事例が増えており,たとえば東京都消費生活総合センターに寄せられたNPOに関する苦情では,1999年度が5件であったのに,2002年度は2月末現在で112件にのぼるという。
 こうした事態を受け,行政側の対応として,大阪府がNPOの評価制度導入を検討していることを紹介している(この評価制度は大阪ボランティアセンターが完成させたものの,大阪のNPO業界では「お上が作ったもん,使えるかいな」と不評であると,2004年日本NPO学会で早瀬昇氏が報告していた)。
 この記事では,シーズの松原明氏がコメントしており,さらに松原氏による「NPOのチェックの仕方」が紹介されている。松原氏は大阪のような動きに対し「行政の対策にばかり頼っていては行政の監督権限が強くなり,自由度が高いことで発展してきたNPOの活動が制限されてしまう危険がある」と語り,さらに彼の言葉として,「NPOの活動を促進するためには市民一人ひとりがしっかりと団体の活動を見極め,悪い団体を放置しておかないように努力する必要がある」と強調して記事が終わっている。
 アエラ記事に比べると,松原氏の言葉のように市民サイド・NPO業界の自立性を強調しているところがポイントであるが,後者の「市民一人ひとりがしっかりと団体の活動を見極め」るというのは,多くを望みすぎの感もなくはないだろう。

「『NPO法人』をめぐる黒い話」SPA! 2003年11月4日号,pp.20-25

 まぁ,この雑誌を取り上げるのはどうかという声もあろうが,一応,紹介しておこう。「NPO法人という信用を悪用し,市民の善意に付け込む悪質NPOの手口を以下,紹介する」ということで,挙げている事例が,以下のようなもの。
●国際協力NPOと名乗り,実は英会話教室
●地域通貨と称し,実はマルチ商法
●「ヤミ金融から救う」と称し,多重債務者をカモに
●NPO名義で安く借りたホールを,出会い系パーティーに又貸し
●暴力団の隠れ蓑
などであり,挿絵に暴力団員風の男が出てくる。細かいエピソードまで読んでいくと,良くもまぁ,世間の悪党どもは悪知恵が働くものだと感心してしまう。その知能を社会貢献に活かせば良いのに,とも。
 さて,6ページに渡るNPO関係の特集が「黒い話」なのは残念だが,最後に「急増するNPOトラブルの背景を専門家に分析してもらった」として登場するのが,紀藤正樹弁護士と,前出のシーズ松原氏。ここで二人が槍玉に挙げているのが,特活法人の認証制度である。
 内閣府の言い分として「認証制度では事前チェックはできない」とあるのに対し,紀藤氏は「…そもそも法案審議の過程で所轄庁がしっかり監督すると主張したから事前審査のほとんどない認証制度になったのだから」と反論,さらに松原氏は過激に「行政がゴリ押しした認証制度が,NPOトラブルの原因となっていると指摘する」とされている。

 さて,これら三つの記事で共通しているのは,法人の認証制度の問題である。特活法人に認証されることが「お墨付き」と誤解され,NPOと名乗ると信用できると思われていることを逆手に取っているのではないか,というのが,悪質NPO登場の大きな理由と捉えているようだ。
 SPA!での識者コメントのように,そもそも認証制度そのものが問題ということも可能である。もっとも特活法制定時の議論を思い出せば,民法34条の特別法である限り,民法34条で規定している「許可」に拘束されることは立法上は逃れられない。あとは運用をどうするかの問題となるが,アエラに記された内閣府の言葉としてあるように「申請上の要件を満たしていれば行政は認めざるを得ない。かつて社団や財団法人の認可が『行政の許可主義』と非難されたこともあるからだ」(ママ。ちなみに社団・財団は認可ではなく許可が正しい)。ただ,この内閣府の言い分と,現場のNPOの言い分は180度逆であり,NPO側からは「許認可と変わらない煩さ」という声も少なくない。が,この問題は本稿では取り上げない。
 さて,アエラで岩重氏が憂いたように行政が選別するのか,松原氏が訴えるように市民側がしっかりすべきなのか。行政側の対応として内閣府では,前回紹介した汲み取りNPOに対する処分など,大きな問題のNPOには処分手続きが取られている。また,それ以外に,内閣府に苦情や疑問が寄せられた特活法人に対してインターネット上で公開質問し,説明を求める「NPO法人掲示板」を2004年6月から設置している。都道府県レベルでも,認証取り消しなどが行われている。特に,3年以上事業報告書を出していない法人は認証取り消しが可能であるため,バタバタと取り消し事例が出ているようで,神奈川県では2004年9月に該当事例が出ており,これが全国9例目と報道されている(神奈川日報Webによる。もっとも同報道によれば,神奈川県では,事業報告書を出していない法人が2割以上という)。

こうした問題は,日本以外ではどうなのか。Voluntasに1本,NPOの不正をテーマとした論文が掲載されたことがあり,次回はその論文を紹介したい。
posted by CAC at 16:17| Comment(2) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
東京経済大学の渡辺と申します。NGO/NPOのアカウンタビリティーを研究している関係から澤村先生の記事に関心を持ちました。ただ、今日までこのサイトを知らず、今回のパートBと前回のパートAは読むことができたのですが、パート@は探し出せませんでした。
誠にお手数をかけて恐縮ですが、パート@をメールでお送り頂く訳にはいかないでしょうか。何卒よろしくお願い申し上げます。
Posted by 渡辺龍也 at 2005年02月07日 12:56
渡辺さんへ。
 左上のカテゴリーの市民・NPOと社会起業家をクリックするとパート@があるようですが。
 このブログとは無関係の者ですが気づきましたので、お知らせします。
Posted by senu2385 at 2005年02月08日 00:30
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