2005年02月03日

「社会起業家」の支援を考えるB 「ビジネス・イノベーション・シリーズ」開催

服部篤子  CAC-社会起業家研究ネットワーク/ 兼任講師(跡見学園女子大学・お茶の水女子大学・明治学院大学)
ここ数年、CACの活動を通じて取り組んできた事は、社会起業家を支援することであった。経済を動かす事業の原点が、個人のアイデアと勇気であった先例を鑑みれば、社会の問題を解決するのも、また、個人の力から始まるものと思う。これまで出会った社会起業家は、「これが社会に必要だ」、と問題に気付き、「そのしくみがなければ作ろう」、と、自分のアイデアを具現化してきた。こういった「一歩を踏み出す」人々を増やせないものか。

これまで、社会起業家たちへのインタビューや、海外の文献調査、そして、海外の研究者との交流を通じて、社会起業家の定義と役割を整理してきた。そこから得た社会起業家支援の方法として、(1)社会起業家精神の育成を意図したカリキュラム、(2)社会起業家のインパクトの測定、(3)社会起業家同士が集まり交流する機会の提供、(4)社会起業家と投資家のマッチング、(5)新たな法制度の提案、が考えられた。
そこで、まず、(1)に着手した。手始めに、昨年、サマースクールを開催した(社会起業家支援を考えるA参照)。その講座を発展させて、今年2月から、「ビジネス・イノベーション・シリーズ」を開講する。

幸い、三菱地所をパートナーとすることができた。第1回丸の内「ビジネス・イノベーション・シリーズ」は、2部構成になっている。前半は、「ビジネス・イノベーション・フォーラム」と題して、講演会を、後半は、参加型の「ワークショップ・シリーズ」である。「丸の内の課題」という具体的にまちが抱える問題を地所が取り上げる。その丸の内課題か、あるいは、自らが取り組みたい「自由課題」かを選択して、実際に、ビジネスモデルを作成するのである。アイデアをブラッシュアップするために、ゲストの社会起業家のミニレクチャーがあり、その社会起業家もメンターに加わって、相互に意見を交える。

本プログラムに登壇する社会起業家の一人を紹介しよう。「フードビジネスは働き方も生き方も変える〜本当に大事なことを仕事にする」と題したフォーラムでは、福井栄治さんが新しいビジネススタイルを語る。
福井さんは、20代、やり手の商社マンだった。希望通り食品部に配属され、自分が提案する企画書はすぐに認められて予算化された。出世が早かった。29歳、会社から留学の機会を得た時、インドネシア大学を選んだ。そこに、経済成長を優先して公害対策を後手に回した、かつての日本をみた。食品添加物や工場廃棄物が原因で多くの奇形児が生まれていたのだ。帰国後、早速解決策を求めて、行動に移すこととなる。子ども達に必要な「オーガニック野菜を取り扱いたい」。しかし、その企画書はなかなか通らない。会社の理解を得るのに半年かかった。これは彼にとっては、初めてのことであった。
 青果物を扱う人々に、野菜の特徴を見極め、それを消費者に伝える人がいないことに気付いた。全国の青果物店を回り、人材育成の急務を痛感した。しかし、いくら調べてもそれを学ぶところはない。しかも、その知識と情報を最も欲していたのは、販売側よりも消費者だった。なければ自分がやろう、一歩を踏み出した。2001年、「ベジタブル&フルーツマイスター協会」を設立し、東京に教室を開いた。主婦や若い女性を中心に、管理栄養士、青果店店長なども学ぶ。わずか3年で3000人以上の「野菜のソムリエ」を輩出した。需要に伴い、本物の野菜を見極め、それを「伝えること」を学ぶ教室を全国展開している。やはり、社会が待ち望んでいたことだった。

このシリーズの次の目標は、個人のアイデアから生まれたビジネスプランが事業化されることにある。ベンチャーに投資するエンジェルがいるように、社会的起業を応援する投資家と、どのようにマッチングできるか、課題は大きい。しかし、一つ一つのプランに込められた挑戦から「イノベーション」が起こることを願って「ビジネス・イノベーション・シリーズ」が始まる。

服部篤子
posted by CAC at 16:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 財団・支援と社会起業家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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