2006年01月09日

<Vol.6 新年号>巻頭言

待場 智雄

2005年は、鉄道脱線事故に建築偽装をはじめとする企業スキャンダルで明け暮れた。メディアのインターネット化のおかげで、小さな事件でも並列して取り上げられるせいもあろうが、企業の社会的責任(CSR)への掛け声が高まる一方で、日本企業への信頼度は年々後退しているような気がする。技術主体のイノベーションが日本経済の高度成長を支え、オイルショックなどの度重なる危機も救ってきた。しかし今後は、日本が得意としてきた技術の応用だけで、グローバル経済を乗り切れるわけではない。「失われた10年」を経て、地球環境や貧困問題が声高に唱えられるようになってもなお、イノベーションの方向を抜本的に考え直すことなく、技術や新製品で生き残れると信じている企業人に大きな不安を感じている(イノベーションという言葉が自動的に「技術革新」と訳されること自体が、日本的発想を象徴しているとも言える)。
実は、新しいイノベーションと言っても、材料は身近に転がっているはず。つまり、顧客やステークホルダーの声を聞くということである。「お客様本位」とは日本企業の得意とするところと思われるだろうが、実際にそうだろうか。であれば、上記のようなスキャンダルは起こり得ないはずだ。また、先日の朝日新聞に次のような記事が出ていた。エアバッグの出現で頭部への衝撃による自動車死亡事故は最近5年間で約800人減った。その一方でむち打ちなど頸部にけがをした人は10万人以上増えたのだという。むち打ちを防ぐシートやヘッドレストはすでに存在し、価格もネックではない。なのに、一部高級モデルを除いて装着されてこなかった(11月10日付「経済気象台」)。
さらに卑近な例として、「ウォームビズ」が挙げられる。ウェブサイトなどを見てみると、様々な重ね着の工夫が紹介されているが、とくに男性ものについては上着ばかりが強調されているように見受けられる。しかし、実際に寒くて困るのは床からの冷えではないか。猿股、股引きなどの下着は格好悪いので、多くの男性は寒いのをがまんしてでもズボンだけで済ませている。上着の重ね着は何も新たな服を買わなくとも可能なのに、こうした新商品ばかり投入されるのを見るとウンザリする。だれか格好の悪くないズボン下や温かいズボンを開発すれば、飛ぶように売れるはずなのに・・・。
私たちが発展を目指している「ソーシャル・イノベーション」とは、閉塞した既存の産業や行政と一線を画し、自由な発想で社会の課題に取り組み、時代の要求に応える新しい仕組みを創り出そうという考え方である。2006年は、「すき間産業」を超えたさらに有望な社会起業家の登場を願い、そうした人々の成長を支える仕組みづくりに一層励みたい。
posted by CAC at 21:09| Comment(0) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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