2005年12月18日

<Vol.6 新年号> ソーシャル・イノベーション 社会を変える力―国際協力の現場から見る「ソーシャル・イノベーション」―

岡市 志奈

私の仕事は、少しでも多くの人がより良い生活、より良い人生を送れるようお手伝いすることだと思っている。その思いは、コンサルタントとして働く時も、NGOとして働く時も同じである。国際協力という分野柄、私の仕事現場はもっぱらアジアの途上国にある。これまでに、ネパール、バングラデシュ、インドネシア、フィリピンなどで、環境保全、保健医療、公衆衛生、教育、災害対策などの分野で、政府レベルからコミュニティーレベルまでの様々なプロジェクトに携わってきた。このコラムでは、これまでの見聞を元に、途上国で起こっているソーシャル・イノベーション(または、その卵たち)を紹介しながら、ソーシャル・イノベーションが引き起される背景的要素、発展段階、要件などを考察する。今回は、このコラムを始めるにあたり、そもそも「ソーシャル・イノベーション」という言葉がどのような事を意味するのかを考えてみたい。

インターネットで「ソーシャル・イノベーション」を検索してみると、次のような解説が出てきた。

ソーシャル・イノベーションとは、「ある意味では昔からあるイノベーションというコンセプトにソーシャルがついたということ」である。イノベーションとは、「これまでになかった要素の結合に新機軸を意味する」ものであり、「大きな社会・経済の変化の基」になるような「発想の転換」である。そして、ソーシャル・イノベーションは、そういった「イノベーションの社会的・組織的側面に特に注目」している。(金子:2005)

ソーシャル・イノベーションとは、「市場を利用し社会問題を解決する事業体(社会的企業)のイノベーティブな動きの総称」である。(大室:2004)

ソーシャル・イノベーションは、「人権・環境・ホームレス・障害者雇用・途上国支援・女性・高齢者など、様々な社会的課題を解決するために新たな社会的商品や社会的サービスを開発し、社会的仕組みを生み出すこと」である。(佐々木)

ソーシャル・イノベーションは、社会への参加(social inclusion)、雇用創出、生活の質といった視点において、人々に社会経済生活での「場」と「役割」を提供することにより、個人、コミュニティーおよび地域の福利(well-being)を改善する新しいメカニズム・規範である。それは、概念の変化、組織の変化、融資形態の変化、人と地域の関係の変化を含みうる。(OECD)

ソーシャル・イノベーションは、貧困撲滅、保健医療機関へのアクセス改善、天然資源の保全などより良い社会を築くため、革新的なアイデアにより始まる。そして、アイデアに留まるのみではなく、社会変化を目指す組織へと成長する。(Stone and McHugh:2005)

上記の解説に共通するキーワードは、「革新的」、「アイデア」、「発想の転換」、「変化」、「より良い社会」といえる。そもそも新しいアイデアとは、複数の既存のアイデアが合体したものである(ヘーレン:2005)。例えば、「使い捨てカイロ」。ある日、製菓会社の研究開発者が配合を変えることにより、脱酸素剤(お菓子の酸化を防ぐもの)が熱を発することを発見した。熱を持つ脱酸素剤は製菓品と共に使えないが、カイロへの使用へと発想を転換することにより、「使い捨てカイロ」が誕生したのである。そして、そのような発想の転換によるアイデアの結合が、革新的であり、より良い社会を創り出す変化である場合、それを「ソーシャル・イノベージョン」と呼ぶことができるのではないだろうか。

このコラムでは、「ソーシャル・イノベーション」を、「発想の転換から既存のアイデアが結合されることにより全く新しいアイデアが生み出され、そのアイデアが個人または組織により実践され、個人、グループ、コミュニティー、地域によりより良い暮らしをもたらす動き、過程、仕組み」として使用してみたい。次回は、この定義をもとに、ヒマラヤ保全協会の活動現場であるネパール山村で起こっているソーシャル・イノベーションを紹介する。

参考文献
大室悦賀(2004)「ソーシャル・イノベーションの社会経済分析−社会的企業を事例として−」第8回進化経済学会(2004年3月27日)http://www.s.fpu.ac.jp/hattori/papers/oomuro.doc

金子郁容(2005)「SIVとの連携について」
http://www.siv.ne.jp/publication/blog/archives/2005/06/20050620_0236.html

佐々木利廣 http://www.kyoto-su.ac.jp/department/bu/zaigaku/tantou17.html

ヘーレン・フレドリック著、中妻美奈子監訳、鍋野和美訳(2005)『スウェーデン式アイデア・ブック』ダイヤモンド社

Adam Stone and Lija McHugh (2005) “New ideas for social change”
http://daily.stanford.edu/tempo?page=content&id=15509&repository=0001_article

OECD ”Social Innovations at Local Level”
http://www.oecd.org/about/0,2337,en_2649_34459_1_1_1_1_1,00.html
posted by CAC at 00:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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