2005年12月18日

市井のソーシャル・イノベーター E

2007年問題とコミュニティ・ビジネス

吉田信雄

本稿は、最近、取りあげられることが多い「2007年問題」への対応として、自治体が退職後の団塊世代がコミュニティ・ビジネスを起業することを支援するというアイデアについて検証することとする。







“あの夢をもう一度”プロジェクト


ボクの住んでいる逗子市では、

団塊世代の大量退職を目前に控え、

彼等の人生の第二ステージを地域活動へと導くための事業を考案中である。

「かつて持っていたもう一つ別の自分のリバイバル
       =第二の人生で楽しい地域生活を過ごす」

題して「“あの夢をも一度”プロジェクト」と名付けている。

具体的には、「この指とまれ」方式で

「みんなで○○をやってみませんか」という

言いだしっぺが仲間を集めるためのお手伝いをする(マッチング)、

人が集まるきっかけを市側が提案する(プロデュース)、

日常的な活動の場所などを市が提供する(コーディネート)

の3つの事業である。


「2007年問題」


逗子市に限らず、

団塊世代が大量退職する「2007年問題」を

地域としてどのように受け止めていくのかは、

多くの自治体が抱えている政策課題のひとつであるようだ。

例えば、今年7月7日付け「官庁速報」によると、

社団法人地方行財政調査会の調査で、

8割の自治体が団塊世代の大量退職を意識して

行政を展開していることが判明したという。

インターネットで

「2007年問題」と「地域」というキーワードで検索したところ、

興味深い二つの文章にヒットした。

一つ目は、静岡経済研究所の

「2007年問題とコミュニティ・ビジネス」と題したコラム。

退職後にこれまで培ってきた技能やノウハウを

地域のために生かしたいと考える団塊世代が

コミュニティ・ビジネスを起業することで、

地域社会に活力がうまれるのではないかと提案している。

二つ目は、「連合総研レポート」194(05年5月1日)に寄稿された

筑波大学大学院教授江口隆裕氏の「地方主権と2007年問題」というレポート。

地方主権の確立のためには、

地域を支える人材の確保が重要な課題であり、

団塊の世代がサラリーマン時代に培った経験を生かす道を

検討する必要性を指摘している。


生きがい起業


現在、全国の商工会議所・商工会が

「創業塾」という起業を志す人たちに講習会を開催しているが、

1999年と2000年に創業塾を受講した

4822名に対するアンケートの結果をみると、

受講生の51.4%は50歳以上となっている。

“あの夢をもう一度”ではないが、

起業を志している団塊世代の男性は少なくないようだ。

今年10月30日付の日本経済新聞の「セカンドステージ」という欄で、

「日本一明るい経済新聞」という新聞を発行している

産業情報化新聞社(大阪市西区)の

代表兼編集長の竹原信夫さん(58)を取りあげた記事が掲載されていた。

竹原さんは、

日本工業新聞社を定年前に退職し新聞社の起業をした方である。

月1回・3万部発行、一部300円。

大阪市内を中心にほぼ近畿一円の中小・零細企業や商店、飲食店などを

月に4、50件取材して記事を掲載されているとのことである。

「景気回復は経営者のマインドが何より大事」と、

厳しい経済下で利益を出し活力あふれる経営を進めている

ベンチャー、中小企業の経営トップに取材。

ズバリ「なぜ、儲かっているのか?」と経営の秘密を探りながら、

明るい記事で読者を元気したいと、

生きがいとやりがいを感じ「毎日が楽しい」と張り切っている。


あらためて、コミュニティ・ビジネスとは?


「コミュニティ・ビジネス」という言葉は

1994年に細内信孝氏がつくった造語である。

「月刊地域づくり」平成16年8月号に掲載された細内氏の

「コミュニティ・ビジネスで新しい地域おこし
  −住民を元気にする自律・循環型の地域社会づくり」によれば、

「コミュニティ・ビジネス」の基本原則は、

@住民主体の地域密着のビジネス

A利益追求を第一としない適正規模のビジネス

Bビジネスとボランティア活動の中間領域的なビジネス

C世界的な視点でビジネスを考え、地域に根差した形で実行する

D開放型のビジネス
(例えば、事業計画や会計情報を地域の関係者にオープンにしている)

という。

また、コミュニティ・ビジネスの社会的意義は、

@働きがい、生きがいを満たし人間性の回復が期待できる

A地域特有の社会問題を解決することが可能

B生活文化の継承・創造

C遊休の地域資源(地域コミュニティ内の雇用を含む)

を活用することで地域内循環型経済が可能になる、とする。


自治体がコミュニティ・ビジネスを振興するワケ


細内氏のレポートによれば、

すでにほとんどの都道府県で

その振興策や支援制度を用意しているとのことで、

啓発・普及の第1ステージから、

コミュニティ・ビジネスのリーダーの育成、支援施設の設置などの

第2ステージへと発展する段階にあるという。

例えば、逗子市も02年度からコミュニティ・ビジネスの支援を行っている。

市役所のホームページを見ると、

次のようにコミュニティ・ビジネスを紹介している。
「コミュニティ・ビジネスは、
 これまで行政がその多くを担ってきた公共サービスの新しい担い手です。
 同時に、ボランティアや営利を第一とするこれまでの経済活動とも異なる
 新しい仕事のスタイルです」

また「勤労よこはま」(05年1月号)では、

横浜市の支援事業を

「地域における新たな創業や雇用の創出、働きがい、生きがいを生み出し、
 地域経済の活性化と豊かな地域社会を創出するため、
 コミュニティ・ビジネスを促進しています」と紹介している。


コミュニティ・ビジネスを支援する理由をもう一度考える


中小企業庁のホームページで

「2004年版中小企業白書のポイント」を見ると、

中小企業が、

高齢化、健康意識の高まり、IT技術の普及、国民の嗜好の変化等を背景に、

健康、環境等に関連するニューサービスを次々と創出し、

新しい豊かなライフスタイルを実現しているとしている。

また、「2002年版中小企業白書のポイント」では、

アメリカ、イギリス等では、

80年代以降「まちの起業家」(自営業者)の数が増加しており、

企業ひとつひとつのイノベシーョンと

雇用へのインパクトはささやかではあったが、

全体として経済活性化に大きく寄与しており、

こうした状況を創り出すことが日本経済にとって今後の課題である

としている。

つまり、「地域の活性化」、「豊かな地域社会」を実現するには、

新しい豊かなライフスタイルを実現するニューサービスを次々と創出する

「まちの起業家」の存在が不可欠なのである。

ここでいうところの「まちの起業家」こそが、

自治体が支援すべきコミュニティ・ビジネスの起業家であり、

地域が定年後の団塊世代に期待する「第二の人生」である。


成功のカギ


最後に、「2007年問題」への対応として、

自治体がコミュニティ・ビジネス支援事業を成功させるカギについて、

「ニューサービスを創出する
『まちの起業家』に光をあてることを意識した事業を実施すべき」

という視点に立ち、結論をまとめることとする。

第一に、

コミュニティ・ビジネスに対する

「ビジネスとボランティア活動の中間領域的なビジネス」、

「ボランティアや営利を第一とする
 これまでの経済活動とも異なる新しい仕事のスタイル」

 という位置づけ方はやめるべきである。

コミュニティ・ビジネスとは、

「ボランティア活動」をするのではなく、

「商売」をするとハッキリと提示すべきである。

第二に、

コミュニティ・ビジネスの起業スタイルとして、

「まちの起業家」(自営業)を視野に入れるべきである。

例えば、「2004年版中小企業白書」では、

コミュニティ・ビジネスの調査結果を基にしたレポートを掲載しているが、

調査対象の80.3%がNPO法人であった。

このコラム「市井のソーシャルイノベーターたち」も、

まさに「まちの起業家」を想定している。

例えば、

「定年退職後の方が自宅をカフェに改築して商売を始めたビジネスが、
 見方を変えれば、地域のコミュニケーション・スペースになっている」

とか、こうしたありふれた「まちなかの小さな起業」であっても、

地域の活性化に寄与し「まちをづくり」に大いに寄与するもと考える。


失敗しないための心得


また、先述の「日本経済新聞」の特集記事に

「『生きがい起業』成功の10ヶ条」が書かれていたが、

その中には

「素人同士が徒党を組んでビジネスを始めると末路は悲惨」、

「趣味で起業するな」、

「親切な知人だけでは役に立たない」など厳しい言葉がいくつかあった。

例えば、

「定年後に市役所の講座で知り合った
 同じ趣味を持った気の合う知人同士」などというのは、

起業を勧める集団としては疑問が残りそうである。



posted by CAC at 00:52| Comment(1) | TrackBack(0) | ソーシャルイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「商売だ」は賛成。
逗子の役に立ちそうな団塊退職者は、東京でやるんじゃないか。
地方の団塊、例えば、大分は、自営業と農林漁業は退職がないし、大分銀行は取引先にはめ込み(まだそのくらいの力はある)、工場勤務者は、人手不足で再雇用、観光業、旅館とホテル、旅行会社、バス会社は、自営化か再雇用か、残るは、自治体の退職者、特に教員、団塊退職者問題は、自治体だとなる。
となると、自治体は、自分のところのコミュニティビジネス化だけに焦点を絞ったほうがいいのでは。自分のことだけやるですね。
要は、団塊退職者問題は、地域毎に退職者の特徴があるので、それに合わせる競争で、合わせ方が面白いと思っている。札幌市は、市所有の都市遊休農地で「さっぽろ農学校」を開校して、3ヶ月農業実習教育をやったあと、農業をやらせ、緑の環境を保護するが、こういうプログラムがベストですね。
こんなの、今探してるところです。
Posted by machida at 2006年01月15日 12:05
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